471 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:36:42.36 ID:KzUJXmBM0.net
今30の俺が小学生だった頃の話。
夏休みの夜はしょっちゅう親父とイカ釣りに行っていた。
夜8時ぐらいから釣りを始めて、夜11時ごろには家に帰って、
釣果のイカを砂糖醤油で甘辛く焼いて食べるのだ。
俺は親父とイカ釣りに行くのが大好きだった。

釣り場は近所の港にある、沖に向かって伸びる堤防だった。 堤防の途中には『進入禁止』と書かれたフェンスがあったけど、 その先が俺らの釣り場だった。
夜まで起きていて良い&ほんとは入っちゃいけないところに入れるという非日常感に、
当時の俺はワクワクしてしょうがなかった。
親父は『お前を連れてくると良く釣れるんだ』と言って笑ってくれた。
何の根拠もないけど、子供ながらに誇らしく嬉しいもんだった。
472 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:39:35.97 ID:KzUJXmBM0.net
ある夜のこと。その日も親父に連れられてイカ釣りに向かった。
水銀灯のオレンジの光で港はぼうっと照らされていたけど、
堤防の方向は明りもなく暗かった。
軽トラを駐車して、堤防に向かった。
暗いけど、月明りでなんとなく周囲は見えた。
堤防を進む間、波がパコパコと堤防の下を叩いて、フナムシがサワサワと散っていく。
分かる人には分かるだろうか。たまんない非日常感である。
堤防には誰もいなかった。
親父はイカ釣りに使う疑似餌を糸に付け、俺に竿を持たせ
キャスト(投げる)させてくれた。
俺はすぐに海底に疑似餌を引っかけるもんだから、
俺の役割はキャストだけで、巻き取るのは親父だった。
俺が投げ、親父が巻く。たまにイカがかかると俺に竿を持たせてくれる。
そんな釣りをしていた。
473 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:45:13.22 ID:KzUJXmBM0.net
そうこうしてイカが2匹釣れた頃、
「ラジオ忘れた。車からラジオ持ってくる」
親父が言い、海に落ちるから歩き回るなよと強く言い含められた。
しばらく経って、ぼけーっと寝っ転がって星空を見ていた俺は、
視界にチラつく明りと足音に気付いた。
親父かぁ~…?思ったより早いな~…と思いながら向き直ると、
顔をライトで照らされた。
「……………釣れるの?」
冴えない風貌の若い男が2人立っていた。
太った男とガリガリの男だった。
「……………2ひき釣れた」
「いいね、釣れてんだ。見せて。」
「凄い。大きいじゃん」
「うわ~~~凄い。」
「生きてる生きてる。」
何と言えばいいのだろう、妙に距離感が近い。
二人とも妙に距離感を詰めてくる、俺が苦手なタイプだ。
二人組はクーラーボックスに入ったイカをべたべた無遠慮に触って
わぁわぁ騒いでいた。
474 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:48:25.72 ID:KzUJXmBM0.net
ひとしきり騒いだ後、
「……で誰が釣ったの?」
太った男が聞いてきた時だった。
「どうも!!!」
妙に元気の良い答えが、俺のでない口から聞こえてきた。
予想外なことに、声の主は親父だった。
ラジオを持った笑顔の親父が二人組の後ろにいた。
「いやぁ、このイカ。元気良いんです。良かったら貰って下さい」
親父はきらきらの笑顔で二人組にイカを渡しにかかった。
俺の親父ってこんなにハキハキしたタイプだったかな?
確かに営業職ではあったけど。
「まあまあ、おいしいですから、どうぞ。刺身もいいんですよね~」
「いや~悪いですよ~」「ねえ」と話す二人に、
親父は白いビニール袋にイカを入れて持たせた。
あれ友人なんですけど。あいつからイカ貰えることになってますんで、
ホントどーぞどーぞ」
確かにちょうど港に入ってくるヘッドライトが見えた。
「そうですか」「じゃあ悪いけど」
二人組はイカの袋をぶら下げて、海に向かって煙草を吸いだした。
475 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:50:46.08 ID:KzUJXmBM0.net
「ではこれで、いったん向こうに失礼しまっす!!!」 港に向かって歩きだした。
ああ俺のイカが………砂糖醤油が……おやじぃ~…… 運転手のオッサンと何事か話すと、その車はぐるっと引き返して
港から出て行ってしまった。
イカもらうんじゃねーのかよ…おやじぃ~~……
とブータレ顔の俺は親父に促され、軽トラに乗りこむと、
俺たちも港から出てしまった。
476 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:57:22.10 ID:KzUJXmBM0.net
おいっどういうつもりなんだぁーと聞こうとする俺に親父は謝りだした。
「すまん。本当にすまん。俺が甘かったんだ、俺が。
もう釣りはやめような。もっと昼間に遊ぼう。
ごめんなぁ、ごめんなぁ」
親父は目に涙を浮かべていた。
さっきの笑顔との落差に俺は何も言えなくなってしまった。
親父が語ってくれた。
オッサンには堤防に行かず帰るように促したこと。
二人組は釣り道具を何も持っていなかったこと。
太った男の方が黒いバットを持っていたこと。
それ以来、親父と釣りに行っていない。

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